黄昏時、小田急線は傾いた陽光を浴びながら新宿を目指していた。
今回の事件は、電車がその乗降口に下北沢からの乗客を載せ終え、出発に体を軋ませた直後に起こった。
黒い服を着た茶髪の女(以降ブラックと呼ぶ)は白い服を着た黒髪の女(以降ホワイトと呼ぶ)に比べ、遊び慣れた感じで、歳は二人共30の手前くらいに見える。
一見清楚なイメージのホワイトとは、もちろん知り合いではない。
本を両手で開いているホワイトに対し、ブラックの左手は忙しく携帯電話に文字を打ち込んでいて、右手はというとファーストフードのcoffeeを蓋を付けずに緩く握っていた。
悲劇は突然、さも当然のように起きた。
…ブッカカリーノ。
ホワイトのホワイトコートにブッカカリーノ。
及びそのお膝元にブッカカリーノ。
ブラックはブラックcoffeeをブッカケーノ。
発車のグラビティでブッカケーノ。
全てを忘れてブッカケーノ。
地震・雷・火事・BUKKA'K'NO!
…適切に応急処置を施すブラック、嫌な態度を少しも見せないホワイト。
約3分間の短いが濃厚なやりとりの後、二人は終着駅まで他人に戻る。
新宿駅ホームへの扉が開いて訪れる別れの時。
立ち上がり、配慮が行き届いた少ない言葉と共にクリーニング代金を差し出すブラックRX。
少し微笑んでから手のひらを現金に向け、軽く首を左右に振るシャドームーン。
事件中微動だにしなかったくせに二人を見て何故か興奮しているオレ。
そして三人は眠らない魔都に吸い込まれた。
それぞれの熱い想いを胸に…
それぞれの場所を探して…
そんな出来事がオレの心にヒッカカリーノ。

0 件のコメント:
コメントを投稿